三次元の紙、無限の美 立川の町工場、ヒット次々 デザイナーらとタッグ、海外でも販売
東京都立川市の町工場が、紙に加工を施して立体化させる技術を活用してヒット商品を生み出している。力を貸しているのはデザイナーや建築家たち。高いデザイン性がうけ、国内の美術館や大手企業からの引き合いのみならず、海外にも販路が広がっている。
網目状の切り込みが無数に入る1枚の紙。端から持ち上げて伸ばすと立体的な器に様変わりする。見る角度によって、色や柄が違って見える不思議な製品だ。
■デザインの力
この「空気の器」(税込み540~1620円)を製作するのは印刷加工会社「福永紙工」。トラフ建築設計事務所(東京)との協働プロジェクトから生まれ、国立新美術館のほか、パリやニューヨークの著名な美術館内のショップでも販売された。2010年の販売開始から累計販売数は約30万枚。
創業以来、箱や包装紙の印刷から加工、組み立てまで請け負ってきた。だが、紙の需要減などで業績は悪化。アパレルメーカーで企画・営業経験がある山田明良社長(56)が着目したのが「デザインの力」だった。06年6月、地元のデザインディレクターと組み、デザイナーたちが福永紙工の技術を活用して自由に紙製品を作り上げる取り組みを開始。紙そのものを主役にすることを目指した。
できあがった紙製品は毎年の展示会で試験販売し、反響があれば製品化する。10年に都内であったインテリアの国際見本市に「空気の器」を出品すると、金沢21世紀美術館(金沢市)や海外の卸売業者から引き合いがあり、注目を集めた。
■200種類に拡大
いまはデザイナーら約50人が参加する。その一人、建築家の寺田尚樹さん(51)は、人物や風景を100分の1サイズのミニチュア模型にデザインした「建築模型用添景セット」(税込み1620円)を手がける。「自分の考えを製品化できて面白い」。大手の自動車メーカーや電気機器メーカーとのコラボ製品も誕生し、集計を始めた09年から累計で約40万セットを売り上げた。
この取り組みを機に紙製品は約200種類に。書店やデザインショップ、美術館など国内約300カ所、海外約200カ所で取り扱われているという。山田社長は「紙の可能性を追求して、今までにない製品を作り続けたい」と話す。(金山隆之介)
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