大きな粒が落ちて小さな粒が残る、不思議なフィルター膜
常識を覆す。
「ふるい」や「ろ過装置」といったフィルターは、小さなものをふるい落として大きなものを残します。しかし、先月末Science Advancesに発表されたのは、その真逆をいく「小さいものを残し、大きいものだけを落とす」フィルターに関する研究でした。
ペンシルベニア州立大学の研究者たちが開発したこのフィルターは、シャボン液のように輪っかに張られて安定した液体膜です。小さい粒子を留め、大きい粒子を通過させる安定した動画を見てみると、研究者の1人が「まるでSFから出てきたかのよう」と言ったのも納得の非現実感。
カギは大きさではなく質量
どうしてこれが可能なのかというと、フィルター膜が、物体の大きさではなく運動エネルギーに反応するからなんだそうです。研究チームの一員である生体工学のTak-Sing Wong准教授は、このフィルター膜の仕組みについて「一般的に、小さい物体はその質量が小さいために運動エネルギーも低い」と語っており「運動エネルギーが高い大きな物体は通り抜け、運動エネルギーの低い小さな物体は保持される」と説明しています。
さらにこのフィルター膜、自己修復するという特性も備えています。大きな物体が落ちた後に修復されるのもそのためで、通り抜ける物体を取り囲み、通りすぎると穴は閉じられるという仕組みです。
フィルター膜は、もっとも単純なタイプだと、水と液体と空気との境界面で安定する物質で形成されます。これは、生きている細胞膜に似た構造。ちなみに、プロトタイプの材料にはせっけん水が使われたそうです。
医療や衛生面で活用できる可能性
このフィルター膜は、機械的な耐久性、抗菌特性、あるいは悪臭の中和など、各々の目的にかなうよう修正&最適化することもできます。研究チームのメンバーで機械工学科の大学院生Birgitt Boschitschさんは「フィルター膜を長持ちさせる成分や、特定のガスを遮る成分を足すこともできます」と説明しています。
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