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乗り心地は? 寿命は? 「空気を入れないタイヤ」はクルマの未来を変えるのか

トーヨータイヤのブランド名で知られる東洋ゴム工業が、空気を入れる必要がないエアレスタイヤの試作品を公開した。通常であれば空気が入っている接地面とホイールの間を高剛性の樹脂製スポークでつなぐことで、剛性と快適性を両立したというものだ。ちなみに同社は2006年からエアレスタイヤを研究しているという。
 
エアレス、つまり空気を入れなくても良いということは、パンクの心配がないだけでなく、空気圧チェックをしなくてすむというメリットがある。筆者は長い間自動車の運転をしてきて、パンクに見舞われたのは1〜2回しかないけれど、試乗するクルマの空気圧を測ってみると規定値ではないこともあるから、エアレスタイヤは便利であるうえに安全性も高いと言えそうだ。
 
しかしタイヤの歴史を振り返ってみると、当初はエアレスであったことも事実。自動車が一般的になる前、ジョン・ボイド・ダンロップの手で自転車用空気入りタイヤが発明されて、これが自動車用でも主流になったという流れがある。
 
自動車用タイヤは今でこそチューブレス方式が主流だが、昔は自転車のようなチューブ入りが一般的で、道路に落ちていた釘などを拾うとすぐに空気が抜けてペチャンコになってしまった。そんな欠点を持つ空気入りが当たり前になったのは、もちろん乗り心地が理由である。
 
自動車にくわしい人なら、サスペンションにも空気入りがあることを知っているだろう。いわゆるエアサスで、高級車を中心に装備されている。金属バネとは特性が異なるので一概には言えないけれど、多くの人はエアサスのほうがまろやかで心地良いと感じるのではないだろうか。筆者も昔、エアサスに油圧による車高調節機能を組み合わせたシトロエンのハイドロニューマチック・サスペンション装備車を所有し、そのフィーリングを堪能していたことがある。
 
そんな経験を持っていることもあって、エアレスタイヤは乗り心地が心配だ。東洋ゴム工業でも、この面ではまだ課題があると明らかにしている。仮に問題がないレベルに開発が進んだとしても、通常のタイヤとは異なるフィーリングをもたらしてくるのは確実だろう。
 
もうひとつ、乗り心地に絡んだ要素としてばね下重量がある。サスペンションのスプリングの下側に装着されるタイヤやホイールなどが重いと、路面からのショックを抑えにくくなるのだ。通常のタイヤは内部が空気だから、この面でも有利だったのである。
 
スポークに使っている樹脂の劣化も気になる。タイヤも古くなるとゴムのヒビ割れを発生するけれど、エアレスタイヤのスポークは路面からの入力を受け続けるわけだから、疲労による劣化が考えられる。これがタイヤの寿命と比べてどうなのだろうか。
 
でもそれは乗用車のユーザーという立場での考えでもある。レンタカーやカーシェアリングの事業者なら、メインテナンスの手間が省けるエアレスタイヤはありがたいのではないかと想像している。自転車のシェアリングでは、エアレスタイヤはすでに実用例がある。そのひとつが以前のコラムで紹介した中国のMobikeだ。上海で目にしたMobikeの自転車は新旧2種類あって、旧型はタイヤの中に樹脂を入れてエアレスとした。しかし乗り心地が悪いという声が多かったことから、新型はタイヤのゴムの部分に小さな丸い穴をずらっと開けた。
 
東洋ゴム工業ではエアレスタイヤを電気自動車にふさわしいと言っているけれど、筆者はむしろカーシェアリング用に向いていると考える。将来、自動運転が一般的になると、自動車の所有は減ってシェアリングが増えるという予想がある。そうなった暁にはエアレスタイヤは重宝されるかもしれない。

 

☆出典は:

citrus-net.jp