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(天声人語)音声翻訳の近未来

 人工知能による同時通訳は実用に堪えるのか。平昌五輪の取材中、スマホの無料アプリを挟んで韓国人と対話し、プロの通訳に判定をお願いした。試したのは米グーグル翻訳と日本の政府系の情報通信研究機構(NICT)の開発したボイストラの二つ▼「乗車券を2枚下さい」といった会話ならお手のもの。差が現れるのは長い文だ。「肥大化した今日の五輪は開催国に負の遺産をもたらす」。この日本語を吹き込むと、グーグルは「膨らむ今日のオリンピック開催国に否定的な遺産を持って」という意味の韓国語訳を出す。ボイストラは「今日は五輪が開催に悲劇的遺産を招く肥大した」。このあたりが限界らしい▼得手不得手はある。グーグルは訳が早い。語彙(ごい)も豊かだが、文法の精度は高くない。ボイストラは構文を整えるのが巧み。言い回しも丁寧だ。反応はやや遅い▼「日本語を介した通訳では実力世界一を自負しています」とNICTの隅田(すみた)英一郎さん(62)。たとえば胃の痛みを外国人医師に伝える場合、刺すような「チクチク」と締め付けられる「シクシク」を訳し分ける▼ライバルはグーグルマイクロソフト百度バイドゥ)といった世界的企業である。「グーグルは2年前、訳が劇的に向上した。先を行かれぬよう常に他社アプリを試しています」▼隅田さんは2年後の東京五輪を実用化のゴールに据える。通訳力を競う国際的なレースは、スポーツに負けず劣らず熾烈(しれつ)である。もう一つの五輪の見どころとして注目したい。

 

☆出典は:

digital.asahi.com